令和4年5月19日、かねてより闘病中だった福田東亜先生が亡くなられた。享年79歳。大学で教鞭をとられる傍ら、山口県の歴史的町並みや町家建築、近代建築、近世民家などの調査研究において、多大な業績を残された方である。また、景観まちづくり活動団体「NPO法人まちのよそおいネットワーク」初代理事長や「山口近代建築研究会」代表を務められるなど、多くの建築関係者との関りも深かった。以下、先生のご経歴とご業績を改めて振り返っておきたい。
福田先生は、昭和18年萩の医者、兼田氏の次男として生まれられ、早くから東京で勉学に励まれた。早稲田大学文学部で芸術学を学んでおられたが、母方の防府のご実家の福田姓を急遽継がれることとなり、山口に戻られた。昭和43年頃から山口芸術短期大学生活芸術科に長年お勤めされ、その間山口県文化財保護審議会会長や防府市文化財審議会会長などを務められた。
著書・共著には以下のようなものがある。
1) 山口県の民家(1982)、山口県の町並み(1983)
2)歴史的町家地区の再生に関する調査研究I-中心商店街のこれからの住宅と商店街像(東洋図書出版 1982)
3)歴史的町家地区の再生に関する調査研究II-近隣商業地区のこれからの住宅と地区整備(東洋図書出版 1984)
4)瀬戸内漁村の変貌と再生(小野田市 1986)
5)中国地方のまち並み(中国新聞社 1999)
6)やまぐちの住宅(山口県建築士会 2000)
また、行政の調査報告に関わられ、まとめられたものとしては、以下のようなものがある。
1)山口県の近代化遺産(山口県教育委員会 1999)
2)萩藩宰判勘場跡~山口県未指定文化財調査報告書10(山口県教育委員会 2001)
3)柳井市古市金屋伝統的建造物群保存地区見直し調査報告書(柳井市教育委員会、2001)
4)阿知須の居蔵造~阿知須町伝統的建造物群保存対策調査報告書(阿知須町教育委員会、2003)
5)歴史の道調査報告書4山代街道(山口県教育委員会、2002)
6)山口県の近代和風建築(山口県教育委員会、2011)
景観まちづくり活動においては、「手作り景観賞」「景観フォーラム」の実施があり、また近代建築に関しては「山口近代建築セミナー」ほか「旧下関電信電話局舎」「旧本郷村庁舎」「宮市商参会館」などの保存活動が挙げられる。先生はこれらを主体的に推進されるだけでなく、会員や関係者との打ち合わせや協議のために、夜遅くまで研究室を開放して下さった。相当にご迷惑をかけたにも関わらず、いつも私たちに温かく接して下さった。
実は、先生が「亡くなられていた」という、その訃報を知ったのは、5か月後であった。11月中旬、特にお世話になった仲間15名でお参りすることができた。その際、奥様が「この写真が書斎にずっと飾ってありました…」と差し出されたのが下の写真である。先生を囲んで景観や町並みについて語り合った楽しい日々、先生の少しはにかんだ笑顔を思い出し、涙を禁じえなかった…。
つつしんで福田先生のご冥福をお祈りする次第である。
〔「山口建築士」2022.12月号/NPO法人まちのよそおいネットワーク 理事長 原田正彦〕