令和5年12月24日(日)、山口新聞「やまぐち近代建築ノート」の最終、第83回が掲載されました。
今回は、エピローグ。
3年9か月にわたって81の山口県内の近代建築・近代化遺産を取り上げてきましたが、常に「現存する貴重な近代建築をどのようにして守り育て、次世代につないでいくのか。」を考えていました。
問い続けたこの課題に対し、最終回、私なりに3つの提言を行ってみました。
一つ目は、「スクラップ&ビルド」から「ストック&リノベーション」へと考えを変えること。
二つ目は、近代建築のリノベーションをまちづくりに活かすこと。
三つ目は、建築愛護の精神を高める活動を継続的に行うこと。
以下、「山口近代建築研究会HP」へ。(画像がクリアに大きく見えます。画像・文とも無断転用不可。)
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近代建築と関わり続けて約40年が経つ。
この間多くの建物を訪れ、魅力発信のため仲間たちと数々のイベントを行い、時には保存活動も行ってきた。
この連載は、自らの体験と文献等で得た新たな知見を基に書き記したものである。
現存する貴重な近代建築をどのようにして守り育て、次世代につないでいくのか。
問い続けたこのテーマに対し、3つの提言を行っておきたい。
一つ目は、「スクラップ&ビルド」から「ストック&リノベーション」へと考えを変えること。
近代建築は地域のシンボルであり、文化や歴史の記憶をつなぐ市民共有の財産だ。
持主はそのことを意識し、「老朽化したから解体して建替える」のではなく、「残して改修しながら活かし続ける」立場へと転換することが、まず求められよう。
リノベーションの優れた事例として、旧小学校校舎の耐震性や居住性の改善を図り、観光交流拠点として見事によみがえった「萩明倫学舎」(第61回)があげられよう。
二つ目は、近代建築のリノベーションをまちづくりに活かすこと。
例えば山口市内の亀山から東の竪小路までの1キロ四方のエリア内には、「旧山口県庁舎」(第21回)「旧県会議事堂」(第22回)ほか、12もの近代建築が現存する。
周辺の歴史的建造物も含め一つ一つ整備を進めていけば、全体として歴史の重層性を持った魅力的な地域になる。
行政も民間も互いに連携しながら「エリア・リノベーション」型まちづくりを進めるべきだ。
三つ目は、建築愛護の精神を高める活動を継続的に行うこと。
建築を守るには、建築を愛する心を育てなくてはならない。
日常的な活用と共に、建物や建築家を顕彰し、魅力を市民で共有する機会を多く作る。
見学会や講演会などのイベントは、「私の町にはこんな素晴らしい建築がある」というシビックプライドの醸成にもつながるだろう。
さて、三年半にわたって続けてきたこの連載も今回で終了である。
途中、「中野家住宅」(第29回)が、国登録有形文化財の答申を受けたと言う朗報が飛び込んできた。
近代建築への関心の高まりを感じつつ、今後も魅力を伝える活動を続けていきたい。
最後までお読みいただき、心より感謝申し上げます。 (おわり)
(山口近代建築研究会、一級建築士・原田正彦)