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やまぐち近代建築ノート連載 第14回「旧下関英国領事館」~最新技術に支えられた煉瓦建築~

▲ 下関英国領事館

▲ 玄関見上げ、南東部外観、マントルピース、アラミドロッドの展示

10月25日(日)、山口新聞に第14回記事が掲載されました。
下関は、近代建築の宝庫。今回は、下関を代表する明治の煉瓦建築で、「旧下関英国領事館」です。
古くから瀬戸内海、日本海、朝鮮半島を繋ぐ港湾都市として発展した下関市。
明治28年にはこの地で日清講和条約が結ばれ、以後国際的存在感を増していきます。
こうした中、明治34年、英国政府は、駐日英国公使アーネスト・サトウの進言により、下関赤間町に領事館を開設しました。
後、明治39年(1906年)、現敷地に新たに建設されたのが、この「旧下関英国領事館」なのです。
ただ、領事館として使われたのは昭和15年までで、戦後市が買収し、派出所、考古館、資料館などに転用し続けた歴史の方がはるかに長いです。

以下、原稿の抜粋。(全文は山口新聞をお読み下さい。)

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設計者は、ウィリアム・コーワンと言う英国政府工務局上海事務所の建築技師長で、続いて長崎英国領事館(明治40年・重文)も設計した。
一階は領事や書記官の執務空間で、二階は領事の居住空間。いずれの部屋も幅広で、天井が高く、正に英国人が設計した英国人のための建物という印象を受ける。
この建物には何度も修理、修繕が施されているが、ここで、築百年を契機に平成20年から六年かけ進められた保存修理工事で実践された新技術に触れておきたい。
一つは、構造補強工事。鉄筋に似た「アラミドロッド」という繊維系新素材を煉瓦壁に挿入して剛度を高め、地震時の水平力により壁がバラバラになるのを防ぐ。
もう一つは、建物全体を地上から50cm嵩上げする揚屋工事。コンピューター制御で、ゆっくりとジャッキアップする。
これで周辺地盤との段差が解消され、豪雨時の浸水被害の心配が無くなった。
実はこうした技術の支えがあってこそ、歴史を伝える旧英国領事館として、今もこの地に建っているのだ。
その優雅な姿の裏には、「地域の宝物を未来につなぐ」という信念を持つ建築技術者たちの知られざる奮闘があったことを忘れてはならないであろう。

【メモ】下関市唐戸町4番11、参考「重要文化財旧英国領事館本館ほか2棟保存修理工事報告書」(下関市2014年)

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